別れ、一人電車の中で
ナタリー、チャリーが上海に発つのを見送り、一人電車に乗り込み格尔木(ゴルムー)に向かう。成都からチベットへの入り口となる青海省のゴルムーまでは3日と聞かされただけだ。何時間か聞いたところで心境的にはそんなに変わらないだろう。中国に来てはじめての電車移動。しかも初めての一人での移動。もちろん不安はある。な何せいままでは中国語堪能なナタリーのおかげで、英語の分かる人が少ない中国で(一般人レベルで話せるのは外国人がよく利用するホテルの従業員か英語を勉強している大学生くらい。僕はそんな感じを受けた。)ほとんど言葉の壁には苦労していない。そのナタリーにおんぶにだっこだった僕とチャリーは全くと言っていいほど中国語を話せるようになっていない。数字と簡単な文法(2つだけ)、数えられる程度の単語(5個くらい)。1ヵ月半もいたのにこの有様。さすがにこれでは中国の旅はきついことは予想がつく。いまさら後悔しても遅いので、英語の勉強に熱心だった僕は中国語を勉強する暇が無かったということにしたい。
 僕の席は三段寝台ベットの一番上。一番下が値段が高く、一番上が一番安い。出発時間間際に列車に乗り込んだので、すでに荷物置き場はいっぱい。どこに荷物を置こうか迷っていた僕を見て、若く僕より少し年上に見える中国人男性二人が荷物を置くところを探し、人の荷物の上ではあるが置き場所を見つけてくれた。中国語でなにやら話しかけてはくるが、まったく理解できない。かろうじて「どこに行くんだ。」という質問は理解でき、「ゴルムー」と答える。彼らにはご飯を貰ったりいろいろと親切にしてもらったが、何せ会話が出来ないのでほとんどの時間は本を読んだりボーとナタリー、チャーリーと旅した中国の日々を思い出していた。
 思えばラオスで出会ってからこの日まで1ヵ月半以上も共に旅したことになる。僕は一人チベットに向かう。彼らは上海に。初めからわかっていたことだけどさすが別れは辛い。この旅一番の辛い別れだった。別れ際、この後のお互いの旅の健康を祈るような言葉を交わし抱き合った。普段は強気で弱いところをあまり見せず、別れ間近になっても寂しそうなそぶりを見せなかったナタリーが目いっぱいの涙をためていた。それを見て僕も涙があふれそうになったが、自然に我慢していた。二人を見送った後、自然涙がこぼれた。
 お互い観光地をがんがん回るようなタイプではなかったので、街を軽く歩いたあり宿でのんびりするしたりすることがほとんどだった気がするけど、退屈することは無かった。沢山話もした。彼らは僕の知らないことを沢山知っていたし、僕も日本の話や、話題に対する自分の意見なんかを辞書引きながら一生懸命話した。初めの頃はどんなだったか忘れてしまったけど、二人とも(特ににナタリーは)僕がわからない単語は丁寧に辞書を引いて教えてくれたので、別れ間際にはコミニケーションもある程度スムーズに取れるようになった。些細な口げんかが出来るくらいにはなった。(これはしゃべれるしゃべれないの問題じゃないか。)
 それにみんな食べることが好きだったので、いろんな料理も食べにいった。ナタリーはベジタリアンなので、中国料理を食べるときは僕らも野菜だけのものを食べたのだけど、(中国はみんなでおかずを分け合って食べるのが普通)二人と一緒に食事するまではこんなに野菜が美味いとは知らなかった。っていうか忘れていたのか。それからはバスの移動のときはフルーツや野菜を買い込んで、バスの中で三人むしゃむしゃ生野菜を食べたりしていた。大理で山でカンフーを習っていたときは、腹が減っては野菜をぼりぼり食べていた。それにインド料理や日本料理、テキサス料理など今までは安いものばかり食べてたから(もちろん安くて美味いものはいっぱいある)、今まで食べたこと無いものを沢山食べれて新しい食の発見も沢山あった。
 今考えると、二人と過ごした1月半は長いようでよく考えれば短いものだ。しかしいつの間にかずっと前から一緒に旅しているように感じていた。そんなふうに自然に感じられる相手にめぐり合うのはそう多くあることではないと思う。いい出会いをしたものだと思う。二人にはまた会いたいし、長くいい関係を続けていきたい。
 二夜を車内で過ごし三日目の朝に成都で買っておいたきゅうりとトマトをこれまた成都で運良く見つけたキューピーマヨネーズをつけながら食べていると、おばちゃんが珍しそうにこちらを見ている。長時間の列車移動では中国人の間ではカップラーメン持参が普通だ。この電車の中で、生野菜をぼりぼりかじっているのは僕ぐらいだろう。
朝飯を食べ終わり、本を読んでいると、周りがざわつき始めた。とうとう憧れのチベットの入り口となるゴルムーに来た。 成都から51時間の長旅だった。

 
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by kazuki-ishihara | 2005-08-12 22:30 | 中国~チベット
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